私のブログ。

このブログを書いているのは誰かな? せーの、私だー!

剣塚

「その町の丘には神代の昔から伝わる伝説の剣があるのにね、誰も抜こうとしなかったんだ。世界は魔王に征服されそうだったのにね」
「誰にも抜けないから諦めたのではないか」
「いいや。魔王に立ち向かう勇気があれば誰にも抜けたんだよ、それは。ただ立ち向かう者がいなかった」
「ああ、分かった。魔王へ立ち向かう理由がなかったんだな。つまりその、魔王は人間の王よりも善政を布いたんだ」
「おしいね。良い線行ってる。確かに人間の王は身分制度の下層に位置する民を虐げたよ。けれど魔王の政治が人間に親切だった訳ではない。人間の王の政治と比べても魔王の政治は人間に厳しかった」
「じゃあ、どうして」
「それはね、留飲が下がったからですよ。自分を虐げた王や貴族が自分と同じ下賤な地位の者として魔族に扱われるのを平民が期待したのです。ああ、人間の貴族たちが剣を抜こうとしなかったのは単純に抜けなかったからですよ」