読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

私のブログ。

このブログを書いているのは誰かな? せーの、私だー!

大学の時に書いた書きかけの文章3

小説

 あの日、私は初めて夜を体験した。

 その思い出を追体験したくなって、今、思い返している。

何かの用事で遠出した帰りに、お父さんの運転する車が渋滞に巻き込まれて、22時を過ぎても家まで帰りつけなかった。そのころの私は毎晩21時には布団に入るほど眠るのが大好きな子で、夕御飯を済ませた以降に外へ出たことがなかった。せいぜいカーテンの合間から少しだけ真っ暗な景色を眺めるくらいで、真っ暗な街並みに放り出されるのは初めてのことだった。

夜の道路を行き交う多くの自動車は、暗闇の中をライトと街灯だけ頼りにして走っていく。それらの灯りは太陽に比べたら全然頼りないのに自動車は構わずスピードを出して、事故を起こしたりしないだろうかと私を心配にさせた。私たちを追い越していく車のタイヤが立てる唸り声がテレビで見た怪獣の声みたいに思えて、震え上がったのを今でも覚えている。

そのあと車は休憩のために高速道路のサービスエリア停まって、私はドキドキしながら車から降り立った。このとき初めて体は闇夜に晒されて、新世界に来たようだった。最初の一歩を踏み出して抱いた感想は空気の違いだ。車内の空気はどんよりと生暖かくて、私を車酔いさせるためにあるような気がしていた。そんなものを吸わないと生きていけないなんて奴隷のようだ。そんな私を夜は一気に開放した。ひんやりとした雰囲気が私を包み込んで火照ったほっぺたに心地よかった。風邪をひいたとき顔に当てられるお母さんの冷たい手と同じ感触がした。

次に私は夜の暗さにびっくりした。その見通しの悪さ、両親の表情に影が差してはっきり見えない感じ、代わりに自分の耳と鼻が鋭敏になるのに気付くと、いよいよ別の世界に来てしまったと思い始めた。車の走る音が道路の方からいつもと違うように聞こえた。感覚的なことだから、どう違うのか問われたら答えに詰まってしまうが、とにかく違うのだ。鼻をひくつかせたら美味しそうなにおいがする。サービスエリアの売店で、お父さんがフランクフルトを買ってくれた。

このような真っ暗闇は、夜に眠るときに自分の部屋でも再現できたが、それは自分の意思で自由にまた明るくすることもできた。しかし外には電灯をつけるためのひもはない。空を見上げるとただ夜空が広がっているだけだ。首が痛くなるくらい顔を上に向けても見渡せない丸くて広い空。360度見渡そうと、私はそこでぐるぐる回転した。飽きないのだ。いくら見上げても夜空が私を惹きつけたのだ。

 学校の音楽の時間に「きらきら光る夜空の星よ」と歌うことは幾度とあったが、本当にきらきら光っているとは思わなかった。サンタクロースがいるなんて嘘だったけれど、綺羅星は実在した。それが一番の感動だった。美術の時間にクラスメイトの誰かがスパッタリングで星を表現していたけれど、本物には敵わない。絵はあんな風に煌めかない。どうやったらあれが絵に描けるのか考えてみたがわからなかった。折り紙に金色や銀色のものがあるんだから、絵具をうまく調合すれば、あんな風に光る色を塗れるのではないかと思った。

 満点の星空を見上げるうちに気づくことがあった。視界の端に映った星の光をちゃんと見ようとして正面にとらえようとするとその星は消えてしまう。

 

 

 チップチューンだよ、ゲームボーイの。