2、3行で終わる小説集
一つ目。
「釣りはいらないよ」気前よくぽんと万札を渡すと、自殺ほう助屋さんは薄く笑いながら「良いのですか? 地獄の沙汰も銭次第ですよ」と言った。「現世ですら上手く生きれないのに、金があったくらいで地獄でどうにかなるとは思えません」と僕は返した。
二つ目。
父の危篤に泡食って放り投げたまま行方が分からなくなっていたスマートフォンはその年のお盆に帰ってきた。父は奇跡的に一命を取り留めていた。
三つ目。
シャープペンシルを分解するのが癖になってるんだ。中学のときに授業がつまらなくなってから。それから今日で40年が経つ。自然と磨かれた俺の業は、シャープペンシルをたちまちに素粒子レベルに分解する。
研究所に素粒子発生装置として雇われることになった。
四つ目。
「すみません。今日カノジョの誕生日なんて早退しますね」と、カレシとカノジョを言い間違えてレズなのがばれた。