前にラノベを書こうと思って挫折したんですよ
「おやおや。ハリボテのリーダーは大変ですね。弱いくせしてトップに立つからスケープゴートにされてしまうんですよ」
「ふふ。そうかもしれないな」
「何がおかしい! 状況を分かっているのですか。ここであなたは死ぬのですよ」
「その間に部下が逃げてくれるなら本望だよ」
「はっ。これだから矜持のないヤツは嫌いですね。逃げた部下は今頃あなたのことを馬鹿にして笑っているでしょうよ。あなたはリーダーと担がれて面倒事を背負わされたにすぎない」
「俺にも矜持はあるさ。ただ、目的を達成するためなら矜持なんて捨てられるだけ……。まあ確かにあんたの言う通りだな。このスタンスじゃ部下に威厳を示せないからいけねえ」
「ほう。だったらどうしますか。この私を、頽廃世界第四位であるミームを倒して武功を立てますか?」
「うん。そのつもり」
「……! はは……どうやら追い詰められてイカれてしまったようですね。あなたの部下が絶対勝てないと狂乱して逃げて行った様をお忘れですか」
「そりゃあ、部下が絶対勝てないってヤツを倒さなきゃ武功は上がらないだろ」
「ハハ……ハハハ……! 本当に頭がおかしいようだ! いいでしょう。気に入った。苦しまずに死なせてあげます………………は? …………!? な、何だこの……闇は!」
ミームの目が驚愕に開かれる。
「あのさあ、ミームさんよお。そんなに多弁だと弱く見えるぞ。……困るんだよねえ、弱いヤツ倒したって部下からの尊敬集まんないからさあ」
「これは……馬鹿な……ぐ、グオオオオオオオオオオオオ!」
ドンッ。
はじけるような音がして、ミームの姿が消える。
「……逃げたか。懸命だな。考えなしによくしゃべるからもっと馬鹿なヤツかと思ってた。……まあ、部下への手土産は腕一本でも充分だろ」
彼は残された右腕を地面から拾い上げた。