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私のブログ。

このブログを書いているのは誰かな? せーの、私だー!

タンデムレベッカ

小説

 深夜にトムが音楽を聴いていると妹のレベッカがやってきて

「今からバイクで走りに行きたいんだ。一人じゃ心細いから後ろに乗ってくれないか」

と言いいました。

 けれどヘッドホンで音楽を聴いていたトムにはレベッカが何を言ったか聞こえませんでした。トムは聞き返すのも面倒くさがって生返事を返します。レベッカは諦めたように首を振り一人でバイクに乗って家を出て行きました。

 ヘッドホンを突き抜けて聞こえてくるほど大きなバイク音が遠ざかっていくのを聴いて、トムは彼女の誘いを断ってしまったことに気付きます。トムは反省しました。あの時、レベッカは暗い顔をしていたのです。

 レベッカは大学受験を控えた受験生であり、近頃は大好きなバイクにも乗らずに勉強へ打ち込んでいました。それで彼女はノイローゼになっているようだったのです。

レベッカは何人かいる兄弟の中で一番トムに懐いてくれていました。なのにそれに報いることをしないなんて、兄として情けないことです。

彼女が帰ってきたら、うんと話を聞いてやろうとトムは決心しました。

でも、彼女は帰ってきませんでした。

一日が過ぎ二日が過ぎそれでも帰ってこないレベッカを心配していると、警察がやってきて、彼女のバイクと冷たい肉体がガードレールを突き破って崖の下に落ちていたことを知らせました。

息をのむ家族を余所に、警察が事件の手掛かりを求めて彼女の部屋に立ちいると、妙に綺麗に整理整頓がされていることを発見します。警察が「これは」と思い、少し探してみると案の定、家族にあてた遺書が隠されていました。その内容から、レベッカは自殺したのだと断定しました。

家族がレベッカの遺書を読みながらおいおいと泣き叫ぶ中、トムは酷く後悔しました。もしあの時ヘッドホンを外してレベッカの話を聞いてやれば、彼女の自殺を止められたかもしれないと。

一方でトムには疑問に思うことがありました。レベッカの残した遺書には家族それぞれに宛てたメッセ―ジが書かれていて、父母はもちろん、レベッカと仲の悪かった弟たちに対しても、一人一人別個に、先立つことへの誠実な謝罪を述べていました。

けれど、トムに対するメッセージだけは、一言も書かれていなかったのです。