私のブログ。

このブログを書いているのは誰かな? せーの、私だー!

ネタバレ感想書き殴り。劇場版まどかマギカ観てきました。

 7時に起きて30分で支度をして雨にも負けず行ってきました映画館。

 上映一時間前の段階で映画館内は観客で一杯です。パンフレットを買うのに物販列に並んだんですけれど40分も並んでようやく買えました。最中暇だったんで数えてみたら上映30分前の段階で物販列に100人以上並んでいましたね。若い男女がほとんどでしたけれど、小さい女の子を連れた親子もいました。

 来場者特典の色紙はまどほむで、神引きだと思いましたよ。ええ、映画を観るまでは。

 映画前の宣伝で化物語とコラボして中の人ネタしてたのは何とも言えない感じでした。知らない人はポカーンってなったでしょう。

 さあ映画が始まります。こっからがネタバレです。

 序盤はまどかマミさやか杏子らおなじみの魔法少女が新たな敵ナイトメアと闘っている。まどかマミさやか杏子が闘っている。プラスお菓子の魔女とキュウべぇ

 いやいやお前ら神になったり円環の理に導かれたりしただろう。

 この時点でこの映画の舞台は誰かのつくった虚構世界であることが予想されて、いったい誰の世界なんだと思いました。推理小説ですね。魔女化まどかかほむら辺りかなあってこの時点で予想してました。

 で、朝になりテレビの使い回しでまどかが母親を起こして食事をとって、食パンをかじりながら登校したところでOP。

 OPよく覚えてないんですが、マミまどさや杏がやたら楽しそうに踊ってるのに対してほむらが泣いて崩れ落ちてるのが印象的でした。これは何かあるなと思ったんですよ。

 OPが終わると学校。さやかと杏子と登校されるまどか。はぶられた緑。転校してくる眼鏡みつあみほむら。なんだか今までにないくらい和気あいあいに魔法少女グループに加入するほむらさん。

 緑の人がはぶられたのは恭介と付き合ってさやかとぎくしゃくした&魔法少女のこと秘密にされてなんとなく疎遠になった、みたいなところがあるんでしょうね。

 さらに追い打ちをかけるように恭介は緑の人に冷たくする。ショックでナイトメアを産む緑。さやかちゃん「人生経験ってやつ?」。あっ。

 こっからしばらく見ていて大爆笑しました。謎のフィギュアスケート変身。プエラマギ・ホーリークインテッド!何これ魔法少女物かよお。突如始まるマジカルバナナ。そして王食晩餐。俺たちが見てたのはトリコだったのか!?早朝朝帰りなのに先輩の部屋によってお茶とケーキいただいてくのが飲み帰りのOLっぽい。

 違和感に気付くほむら。眼鏡とみつあみをほどき馬脚を現す。頼れるのはやっぱり杏子ちゃん!暗躍する時に便利な安定のアウトローキャラ。町から出れないのは?風絶!?

 マミさんの連れてるお菓子の魔女が怪しいと睨むほむらさんは時間をとめて尋問。ちょっと先走り過ぎじゃないですかほむらさん。しかし事前にマミさんによって足に巻き付けられたリボン。始まる銃撃戦。ほむらが取り出した拳銃で世界観が一篇。止まる無限の銃弾。マミさんつえー!このシーンだけで見に来たかいがあるってもんよ。互いに致命傷を与えることができないでいるほむマミ。いいっすねえ。

 マミさんに追い詰められ絶対絶命のピンチに陥るほむらを助けたのは懐かしの消火器と剣……サヤカチャン!? お菓子の魔女がロリキャラアスミスボイスに!??

 なんてことださやかちゃんはスタンド使いになってしまったのか!!

 まどかさんに見付かって、慌てて目元の血をぬぐい去るほむらさん可愛い。まどかさんまた訳が分からないよって顔してる。

 ついに真実に気付いたほむらさん。ここはほむらさん自身が作り上げた理想の世界だったのだ!! いや、主人公が犯人ってネタは使い古されてますぞ。崩壊し始める世界。魔女化するほむらさん。話が壮大になってきて感情移入ができねえ。

 キュウべぇが悪事を暴かれて針のむしろ状態になっている。ざまあと言えないのはなんで何でしょうね。

 ようやく迎えにきてくれたアルティメットまどかさん。さやかちゃんも円環の理の一部になっていた!? 「3年もかかっちゃった」ってお前らもう高校生かよお。

 ああ、ここでほむらが救済されて終わりなのかなあと思うものも、思い出すはオープニング映像。オープニングでは最後まで救済されてないほむらさん。思い出すは予告の映像。まだほむらさんがソウルジェム噛み砕くシーンをやっていない。まだなんか在るぞ?

 悪堕ちだああああああああああ!! すべては愛ゆえに!! つうかコスチュームエロいっすよほむらさん。愛が重いっすよ。

 「「「「わけがわからないよ」」」」

 このセリフはちょっとあざとすぎるというか、この映画全体的にファンサービスのやりすぎですよ。

 改変された世界でスタンド能力を保ちつつも人間としての人生を取り戻したさやかちゃんの心の中のぐちゃぐちゃ感が伝わってきていいっすねえ。

 転校してくるまどか。お前帰国子女かー。

 せっかく集まってきた友達候補をほむらに散らされてまどか可哀想だと思いました。そんな怖い人に抱きしめられて電波なこと言われてリボンをプレゼントされるまどかさんは当然ひきつった表情をしています。エンディングへ。エンディング後のぼろぼろキュウべぇは何故わざわざ入れたのか分からない感じでしたね。

 終了。

 テレビアニメ版では時間移動する度にまどかが記憶を失うのが辛いと言ってたほむらちゃんが、今回は自らまどかさんの記憶を奪ったのは成長の証と言っても良いんですかね。

 ちゃんちゃん

 

 

剣塚

「その町の丘には神代の昔から伝わる伝説の剣があるのにね、誰も抜こうとしなかったんだ。世界は魔王に征服されそうだったのにね」
「誰にも抜けないから諦めたのではないか」
「いいや。魔王に立ち向かう勇気があれば誰にも抜けたんだよ、それは。ただ立ち向かう者がいなかった」
「ああ、分かった。魔王へ立ち向かう理由がなかったんだな。つまりその、魔王は人間の王よりも善政を布いたんだ」
「おしいね。良い線行ってる。確かに人間の王は身分制度の下層に位置する民を虐げたよ。けれど魔王の政治が人間に親切だった訳ではない。人間の王の政治と比べても魔王の政治は人間に厳しかった」
「じゃあ、どうして」
「それはね、留飲が下がったからですよ。自分を虐げた王や貴族が自分と同じ下賤な地位の者として魔族に扱われるのを平民が期待したのです。ああ、人間の貴族たちが剣を抜こうとしなかったのは単純に抜けなかったからですよ」


前にラノベを書こうと思って挫折したんですよ

「おやおや。ハリボテのリーダーは大変ですね。弱いくせしてトップに立つからスケープゴートにされてしまうんですよ」

「ふふ。そうかもしれないな」

「何がおかしい! 状況を分かっているのですか。ここであなたは死ぬのですよ」

「その間に部下が逃げてくれるなら本望だよ」

「はっ。これだから矜持のないヤツは嫌いですね。逃げた部下は今頃あなたのことを馬鹿にして笑っているでしょうよ。あなたはリーダーと担がれて面倒事を背負わされたにすぎない」

「俺にも矜持はあるさ。ただ、目的を達成するためなら矜持なんて捨てられるだけ……。まあ確かにあんたの言う通りだな。このスタンスじゃ部下に威厳を示せないからいけねえ」

「ほう。だったらどうしますか。この私を、頽廃世界第四位であるミームを倒して武功を立てますか?」

「うん。そのつもり」

「……! はは……どうやら追い詰められてイカれてしまったようですね。あなたの部下が絶対勝てないと狂乱して逃げて行った様をお忘れですか」

「そりゃあ、部下が絶対勝てないってヤツを倒さなきゃ武功は上がらないだろ」

「ハハ……ハハハ……! 本当に頭がおかしいようだ! いいでしょう。気に入った。苦しまずに死なせてあげます………………は? …………!? な、何だこの……闇は!」

 ミームの目が驚愕に開かれる。

「あのさあ、ミームさんよお。そんなに多弁だと弱く見えるぞ。……困るんだよねえ、弱いヤツ倒したって部下からの尊敬集まんないからさあ」

「これは……馬鹿な……ぐ、グオオオオオオオオオオオオ!」

 ドンッ。

 はじけるような音がして、ミームの姿が消える。

「……逃げたか。懸命だな。考えなしによくしゃべるからもっと馬鹿なヤツかと思ってた。……まあ、部下への手土産は腕一本でも充分だろ」

 彼は残された右腕を地面から拾い上げた。

今朝見た夢

 部屋に機械音が鳴っていた。ブーンってドリルが回転するような音がしていて、実は機械じゃないのさ。ハチだった。それはそれは奇妙なハチが羽ばたいていた。僕がハチにおびえて部屋の入り口から逃げ出すと、たまたま同じ部屋にいた後輩は臆することもなく飛んでるハチを目で追って、言う。

「このハチ、背中に幼虫を背負ってますね。おんぶハチですよ」

 シュッとした流線型のハチはたしかに背中に白くて醜いガムみたいなものをこびり付けていた。飛んでいるからよく追えないが、あれがハチの幼虫なんだろうか。

 後輩はもう興味をなくしたようで、パソコンの画面に目を戻した。画面には私のこれまで生きてきた記憶が走馬灯のように流れていた。私は24年間生きてるのだから、彼がそれを見終わるのに24年かかるのだろう。

「ハチは、もういいのかい?」

 僕が恐る恐る言うと、後輩は画面から目をそらさずに言う。

「放っておけばそのうち死にますよ。おんぶハチは幼虫を背負ったまま飛び続けていると、幼虫にぼこぼこに殴られて死んでしまうんです」

 僕は驚き眼をみはった。おんぶハチはまだ飛び続けていた。なのに死んでしまうんだという。

なぜ幼虫はハチを叩くのだ? それを聞こうとしたところで私の目は覚めて、奇妙な夢とともにおんぶハチも後輩もいなくなってしまった。

エルマー・ヴァン・デル・ライデンからの手紙

 夕暮れの街を駆け抜けるあの電車に大槻は揺られている。大槻にとって電車は実に良いものだった。ただ乗っているだけでどこかへ運んでくれる。切符を買って乗り込んだら、後は目的地に着くまで座っていればいいのだ。身体を意識的に動かす必要はなく、植物みたいに椅子に根を張るのだった。

 やあ窓の景色を見てみれば草木が生えて、電車が通る勢いに揺さぶられている。彼らは何処にも行けないけれど、大槻は何処にでも行けるのだ。電車の許す限りではあるけれど。

 そんな調子で大槻がボーっと車窓から見える景色が流れていくのを見ていると、電車のスピードが緩まって、駅に停まった。乗客が乗り込んできて、途端に身をすくめた。黄色いバッグをかついだ中学生や、丸刈りの男子高校生、紫の髪をしたおばさんといった連中が混ざりあって電車内に乱立するのを見ると、落ち着いてられなくなったのだ。

 大槻は心を鎮めようと、膝の上に抱えたカバンの中からエルマー・ヴァン・デル・ライデン宛てに送られた封筒を取り出し、そこから何枚かの便箋を取り出した。そこには小さな丸い文字で短い物語が書かれている。

 大槻はその物語に目を落とし、これで何度目になるか分からない読書を再び始める。

 

 カミーユは朝目を覚ますと自分の左胸が磁石になっているのに気付いた。今まで兆候はあったが微弱な磁力だったので気のせいだと思っていた。だけど今朝に限っては、認めざるを得ないほど強力になっていた――そう、くっついてとれなかったのだ。彼女のパパがお節介にもくれた毎朝やかましい目覚まし時計が張りついて、心臓の鼓動と一緒に振動しているのだ。お陰ですっかり目が覚めてしまった。睡眠を何よりも大切な時間だとしていたカミーユにとって、目覚ましごときに起こされるのは屈辱的だった。

力を入れて引っ張って、ようやく目覚まし時計を取り外して時間を見ると、彼女は大学の授業が既に始まった後だと気付いた。

 カミーユは自分の身に今起きていることが、いつか読んだ小説に出てくるグレゴール・ザムザの運命に似ているぞと思った。ザムザは毒虫になってなお、仕事を寝坊したことに焦り、毒虫の姿で出勤しようとしていたのだ。そしてカミーユは磁石人間となった。ザムザを反面教師にすれば、カミーユは授業に行かずに自分の身体に起こった異変について案ずるべきなのではないかと彼女は思った。

 ベッドから半分だけ身体を這いだし、ベッドの隣にあったスチールの机から、張り付いていた磁石を一つだけとって、自らの左胸へ近づけた。すると、カミーユの左胸は磁石のS極に引力を、N極に対して反発を示した。

「南極へ行ってうつ伏せになればあたし宙に浮くかもしれないわ」地球が巨大な磁石であることを思い出して彼女は独り言を言った。

「さあて。磁力が発生しているということは、その発生源は大抵の場合、電子の運動に決まっているわ。一口に電子の運動と言っても、並進運動、熱振動、スピン運動の少なくとも三種類くらいあるかしら。果たしてどれでしょうね。

電子の並進運動はつまり電流こと。だけど私の身体の中で電流が流れているとは考えにくいのよね。こんな時テスタがあれば私の中の電流値を調べられるけれど、気の利かない私の引き出しにはボールペンとかスケッチブックしか入ってない。まあとにかく、電流は磁場発生源の候補から外しても良いでしょう。左胸だけに電流が流れていると考えるのも不自然だしね。

次に熱振動だけど、そういえば電磁気学の講義で熱振動による磁場の発生について習った覚えがないわ。いったいどうしてかしら。でも素直にフレミングの法則を使ったら、引っ張る力と追いやる力が交互に生じる磁場になるだろうことは分かるのよね」カミーユは左手をフレミングのそれの形にして、一定のリズムでひっくり返したり戻したりしていた。「でも私の愛すべき目覚まし時計は私が引っぺがすまでくっついていたわ。ということは力の向きは一定だし、熱振動説はやはり却下ね。とすると残るは本命のスピン運動だわ。磁石が磁力を生み出す根源こそスピン運動なのよ。スピン運動が磁力となるのは、全部の電子が同じ向きにスピンしなきゃいけないけれど、磁石の結晶ってそうなるような形を初めからしているのよね。つまり私の左胸も何かの拍子にそういう、スピンが同じ向きになるような形に、なっているということなのかしら。ああ、後で科学の本をひっぱりだして、磁石の結晶構造と私の左胸の結晶構造を比べてみようかな」

 その後もカミーユはベッドの上でうんうん唸っていたけれど、しばらくすると大きなあくびをして布団に再び潜って二度寝を始めた。

 もし君がカミーユに「磁石になった左胸の謎はもう良いのかい?」と聞けたなら、彼女は眠りを妨げられた時の不機嫌顔でこう言うだろう。

「睡眠を我慢してまで考える価値のない謎だって気付いちゃったの」

 

 ちょうど読み終わったところで電車は駅に停車した。新たな乗客が乗ってくる。

「この席空いてますか?」

 顔を上げると眼鏡をかけた若い女性が大槻の隣の席を指さし立っていた。黒い髪をポニーテールにして、服は白くてひらひらしたフリルのついたシャツに青いスカートを身に付けている。大槻が「空いている」と答えると女性はホッとした顔をしてそこに座った。

「ああ本当に良かった。これで空いていないと答えられたらどうしようかと思いました。今日は嫌なことがたくさんあって弱気になっていましたの。ねえお兄さん、ちょっと聞いてくれませんか」

 女性はまくしたてるように口を開く。戸惑う大槻の無言を肯定と捉えたのか、一気にしゃべり出した。

「今朝はどうしたことか目覚まし時計が鳴らなかったんです。そのせいで授業に遅刻しましてね。私、大学の法学科に通ってますの。で、遅刻した授業というのが厳しい先生の担当で、遅刻した生徒は欠席扱いにするばかりか、授業で配られる資料すら渡さないという性根の腐った野郎でございまして、私は大変困ってしまいましたの。だから私、クラスメイトに頭を下げて資料のコピーを頼みましたわ。そのコピーを頼んだ人たちというのが私とはそれほど仲のよくないグループの人たちでして、残念なことにクラスで会話をしたことのあるのがその人たちしかいらっしゃらなかったの。別に、私に友達がいない訳ではありませんよ。たまたまその授業に友達がいなかっただけですわ。

ともかく、その人たちって軽薄で図々しいの。曲がりなりにも資料をコピーしてくれた人たちを悪しざまに言うのもはしたないことではありますが、それを承知でもう一度言わせてください。その人たちったら本当に軽薄で図々しいの。私、彼ら五人分のお昼ご飯をおごらされたわ! 一人分の資料をコピーするのになんで五人分もおごらなきゃいけないの。しかもファミレスで下らない話に付き合わされたわ。三時間もよ。ドリンクバーにデザートまで頼みやがりましてぺちゃくちゃと三時間しゃべりつづけたのよあの人たちったら。いやね、私だって最初はがまんしましたよ。彼らの下種な話題にはついていけなくって、でも恩義があるから無下にもできず愛想笑いでごまかしたのだけど、それをあの軽薄な女『大八木さんってノリわるーい』ですって! ああ思い出しただけで腹が立つ。その後血液型の話になってね。やっぱり軽薄な顔した男の一人が『大八木って何型なの?』だって。呼び捨てで呼びやがったのよ。正直に『AB型です』って答えたらさ、『そこは新潟ですってボケるところだよ新潟県民ならさー』と言うのよ? 『は?』と声が漏れそうになったわよ。どうしてそんな詰まらないボケをしなきゃならないのよ。ボケてるのはそっちの頭じゃないの。その上『やっぱAB型は自分勝手で空気読めないよねえ』だってさ。もう本当『は?』よね。何。血液型占いなんて非科学的なこと信じてるの? 根拠のないエセ科学を振りかざして人のこと貶めちゃってさ。そう言うのを許されない悪って言うのよ。

まったくそもそも血液型って選択肢が最悪よね。レディに血液型を聞くくらいなら指輪のサイズでも聞きなさいよ。それがロマンチックで実に良いわ。まあ聞かれてもあんな男に教えたりはしないけどね」

 女性の話が一息ついたとこで電車は再び駅に停まった。

「僕、この駅で降りるんで」と大槻が言うと、女性は我に返ったような顔をして「ああ、私ったら長々としゃべっちゃってごめんなさい」と言って恥ずかしそうな顔をした。「でも、聞いてくれてありがとう」

 

 一期一会の女性の話を聞いて、大槻の心には未知との遭遇を果たしたような好奇心があった。人間は見知らぬ人にだってああやってペラペラとしゃべることができるのだと、初めて気付いたのだ。もし大槻が今からそこいらにいる暇そうな人物を捕まえて話をするとしたら、どんな話をするだろう。

「聞いてくれ。僕は本当に怠け者な人間で、人にあれやれこれやれと命令されなきゃ自分からは動けない駄目人間だ。幼い頃からそうだったし、この怠け癖は生来のものなのだろう。小学生の頃は宿題だって母に怒られなかったらやらなかったし、ご飯だって食えと言われなければ食べなかった。同い年の人たちが当たり前のように行使している自主性が僕には欠けていたのだ。そんな僕に友人たちは愛想を尽かして離れていった。これで両親が死んでしまったらお前は生きていけないじゃないかと両親からいつも心配されていた。

そして今、心配が現実のものになっちまったのだ。ひとりぼっちになってしまった僕はろくな食事をしなかったし、洗濯物は溜まる一方。着ているシャツも臭い。その上部屋は埃だらけだ。もうこれは死んだ方が良いなと思うのだけど、自主性がない僕には自殺することすらやる気が出ない。

 そんな僕に先日一通の封筒が届いたのだ。正確にはエルマー・ヴァン・デル・ライデン宛てにだったのだけれど。もちろん僕の家にはそんな外国人は住んでいない。しかし住所は確かに僕の家となっていた。これは不思議だなと思って封筒を開いて見ると中には短い小説と一通の手紙があった。

『突然のお手紙申し訳ありません。でたらめな住所を書いて闇雲にお手紙を出させていただきました。当然エルマーさんなる人物はいらっしゃらないのでしょうね。分かっています。そんな人物がいたら良いなあと思うのですが、それはただの願望です。それでも私は、私の小説を誰かに読んでもらいたかったのです。そしてあわよくば感想をいただきたい。

お手数ですが同封した小説を読んでもらえると嬉しいです。初めて書いたので、めちゃくちゃで、起承転結もなっていない、価値のない文章かもしれません。つまらなかったの一言でも構いません。屑小説と罵っても良いです。どんな評価も受け入れ、歓迎します。どうか正直な感想を私にください。よろしくお願いします。』

 手紙の最後には送り主の名前、県外の病院の名前と、入院病棟の部屋番号が書いてあった。

 この手紙は僕へ下った久々の命令だ。僕は何としても手紙の送り主へ感想を届けねばならないと思った。そのためにまずペンと便箋を買ったし、その病院へ行くための汽車を調べもした。人に会うために身なりを清潔にして、ひげを剃ったよ。ああ、僕がペンと便箋を買ったのはね、直接感想を言う勇気がなかったからさ。病院まで行ったら看護婦さんに託して渡してもらうよ。もちろん送り主の名前はエルマー・ヴァン・デル・ライデンさ。今から届けに行く」

 大槻は頭の中でそんなセリフを反芻していると心が躍って、病院に向かう足取りが跳ねるようになった。もちろんその辺の見知らぬ人を捕まえて上記のようなセリフを言ったりなどしない。大槻にとっては頭の中で言葉を発するだけで十分だったのだ。

 大槻は病院に着くと案内板に従って、入院病棟へ一直線に向かおうと思った。だけどちょっと思い直して一階のロビーに座った。カバンから渡す予定の封筒を取り出すと封をしてあったシールを丁寧にはがして中に入れてあった手紙を取り出し、その最後の余白にこう書き足した。

「追伸。これはちょっとした雑談ですので気楽にお答えください。あなたの指輪のサイズはいくつでしょうか?」

 大槻は満足した表情で手紙を封筒にしまい直すと、丁寧に封をし直し、入院病棟へ向かった。

 彼は気付いていなかったが、このささやかな書き加えこそ彼が初めて為した自主的な行為だったのだ。

タイトル特に思いつかんかった

「さあ、嘘を吐け。さもなくば死ぬぞ」

 もちろん死ぬはずなんてないのだ。

 

 この最初の二行を読んだ読者は、なんだよくわからなねえと思うだろうが、まったくその通りである上に今後理解できる日は来ないだろう。

 普通の小説だったらここから読者に分かりやすい説明がドラマチックな展開とともに行われるのだろうが、私はそんなの書くつもりはない。甘えんな!!

 この俺がまともなプロットを立てていると思うなよ? まったくをもって無計画じゃ。嘘を吐かなかったら死ぬとか阿呆くせえ。もちろん死ぬはずなんてないのだなんて悟っちゃったようなこと言っちゃって! いつからそんなに大人びてしまったの。

 や、無理をすればこの先の展開をつくることもできる。例えば最初のセリフを言った人物は、言霊の力を心から信じる男で、もし相手が嘘を吐かなかったら本当に死ぬと勘違いしているのだ。それで言われた側は言霊ごときに殺される軟弱な身体は持っていないし死なないと思っているのだが、相手に合わせて嘘を吐こうと試みる。なぜわざわざ狂人に付き合う真似をしようとするのかと言えば、相手が正常な精神を持っている時に莫大の恩を受けたか、コイツを利用してひと儲けをたくらんでいるか、もしくはこいつに習って自らも狂人になろうとしてるからだ。私の頭に浮かぶ選択肢はこの程度だが、どれをとっても大した話にはなりそうがない。物語じゃねえんだ。書きたいのは。

 ところで夏になるとなぜかミミズがアスファルトに這いだしてきて、そこで干からびるか轢かれるかして死んでるんだ。奴らは自殺志願者なのか? 毎年年中行事のように大量に死んでやがる。いい加減絶滅するんじゃねえのか? 日本人だって毎年三万人自殺していて絶滅しようとしているしさ。

 そうだ砂漠をアスファルトにしようぜ。あんなところに森をつくるならアスファルトもだ。舗装されていれば植林の保全に車で行けるし歩きやすくなるし、砂漠で遭難していたサンテグジュペリも星の王子様に出会わず帰還したかもしれない。納豆菌ポリマーがすげえ吸水するから砂漠に納豆菌撒こうぜみたいな話になってるんだっけ。もやしもんで言ってました。はい。漫画は人類にすべてを教えてくれます。

 漫画を、漫画を読むのです。絵柄で好き嫌いしてはいけないのです。

クイジルカラ

 俺がクジラだとしたら先輩はイルカですよ。

それが陸上部の後輩の遠藤が僕を褒めるのによく使う言葉だった。イルカがジャンプをすれば全身が水中を飛びだし高く天へ登っていく。なのにクジラときたら尾びれが水面を出ることすらままならないのだ。

「クジラとイルカって生物学的には大きさしか違いがないそうだよ」

と僕はあえて的外れな言葉を返すようにしていた。この褒め言葉を素直に受け取るのは藪蛇だと思ったからだ。

 足のサイズから算出したスタート位置について僕は高跳びのバーを見据えた。少し後ろで遠藤が待機している。靴の裏を地面になすりつけている。

 僕はバーに向かって走りだした。学校の図書室にあった教本の教える通りに走った。跳んだ。跳べた。マットに包まれた。これだけの行為が僕の放課後に必要なすべてであって、世界を閉じる鍵なのだ。

 跳び終わってマットから降りると遠藤が助走をする体勢に移っていた。バーの高さを下げてやろうと僕は手を伸ばしかけたが、遠藤が手ぶりで追い払うようにしたので僕はバーから離れた。

遠藤が走り出し、バーの手前で踏み切ってジャンプすると、例のクジラの尾ひれが水面から出切れずにバーをひっかけて落とした。

「この足が。この足が邪魔だ。この足がいつも引っ掛かるのが悪いんだ」遠藤は自分の足を叩く。

やっぱりバーの高さを下げようと僕が提案すると遠藤はムスッとした顔で「じゃあもっと下げて女子に交代しましょう」と言う。仕方ないのでそのまま女子部員が練習で跳ぶ高さまでバーを下げた。順番待ちしていた女子部員たちは「もういいの?」と高跳びのエリアにおずおずと入ってきた。僕と遠藤は荷物置き場へ休憩を取りに戻っていく。

 途中、サッカー部の活動エリアからボールが転がって来ていたから、すぐに蹴り返した。サッカー部員たちはプレイに熱中していて戻ってきたボールに気付かないでいた。

 荷物置き場に戻ると、他の部員たちは走りに出てるので僕と遠藤の二人きりだ。

「毒殺された透明人間の話って知ってるかい?」

 沈黙に耐えきれず僕が無駄話を始めると遠藤は興味がなさそうにしぶしぶ顔をこちらに向けた。

「僕は知ってる。彼は実に綺麗な透明だったよ。ガラスや水みたいに屈折もしないし夜でも光を反射しない。完全な透明さ。だから透明人間は透明になれたことが嬉しくてさ、いろんなやんちゃをするんだ。盗みを働き、女子更衣室を覗き、学校の窓を割って回った。それだけの悪さを働いて、彼は捕まらなかった。透明だからさ、見つけようがないんだ。誰も彼を捕まえられないとそう思ってた」

 前に遠藤はサッカー部と揉めたことがあった。

 サッカー部の方から転がってきたボールで遊んでいた遠藤の背中を蹴り付けたのだ。

「だけど透明人間は見付かったんだ。人に、じゃないよ。蛇に見付かった。盲点だったことにね、世の中には目に頼りっきりの人ばかりじゃなかったんだよ。蛇みたいに温度センサーで世界を見られてしまうと透明人間の居場所はばればれでね。それで彼は蛇にかまれて、毒が回って死んだんだ」

 本当にあれは傑作だった。遠藤の背中を蹴ったサッカー部員の罵倒の言葉がだ。「ああ、お前高跳びの選手なの? あんまり低く跳んでるから走り幅跳びかと思った」というのだ。おかしい。でもこの言葉が遠藤の、中学生に相応しい分不相応な自尊心を揺さぶったのだ。残念なことに彼らの対立は即座に泥沼な殴り合いに発展した。

「ちょっくらトイレ行ってくるね」そう遠藤に告げて、僕は校舎の中へ向かった。

 学生用玄関で下駄箱から内履きを取り出すのも面倒で、運動シューズを履いたまま校舎内に入った。放課後の学校はちょっと薄暗くて人気が少なかった。

 階段を上って行くと一度だけ先生とすれ違ったので、軽く会釈した。土まみれの運動シューズのまま学校に上がり込んでるのがばれないか内心緊張したのだけど、先生は気付かずに行ってしまったので胸をなでおろした。

 階段の一番上まで上り詰めると屋上へ出る扉があって、当然鍵がかかっていた。力を込めて扉を蹴り破ると開放的な空間が広がった。

 屋上に出ると空はオレンジ色をして、コンクリの床を照らしていた。屋上の端はフェンスで囲まれていて僕の胸の高さまであった。さっき跳んだ高さだ。フェンスの向こう側、少し先を見ると色んな部活が運動しているのを見下ろせた。陸上部の活動エリアを見ると、女子部員はまだ高跳びをし続けているようだった。

 僕は地面を見下ろしながらフェンスに沿って歩き、学校の周囲で一番人の気配がない場所を探した。するといくつかの場所が条件に当てはまったので、さてどれにするかと思案したが、思い直して最初に見つけたポイントにすることに決めた。

 感覚を頼りにフェンスから距離を取った。

 図書室にあった教本の通りに僕は走り出し、フェンスの手前で跳躍をした。

 僕の世界が閉じられる。

 浮きあがった上半身はフェンスを越えると、すぐに下へ引っ張られた。

 だけど尾びれがフェンスに引っかかった。

 フェンスで背中を打った僕は痛みが走るのを感じて、フェンスに足を引っ掛けたまま逆さでぶら下がっていた。オレンジの空を鳥の群が飛んでいくのをしばらく見ていた。

 

 僕がコンビニからグラウンドへ戻ってきた頃には、女子部員は高跳びをやめて荷物置き場で休憩をしていた。

「その手に持ってる袋は何?」

 と彼女に聞かれるままに、手に持ったコンビニ袋からアイスを取り出して女子に渡してやると、大いに喜ばれた。

「サボりのペナルティを与える前にパシリに行ってくれるなんて気が利いてる」

「遠藤はどこに行ったんだ? アイツの分のアイスも買ったんだが」

「見てないよ? 一緒にサボってたんじゃないの?」

 遠藤はそのままグラウンドに戻ってこなかった。遠藤の分のアイスは溶けそうだったから女子部員が食べた。「きっと何か急な事情があって帰ったんだよ」と女子部員は言う。

直に部活も終わりの時間となる。高跳び用のマットを倉庫に片付けて、クールダウンにちょっとだけグラウンドを走っていると、僕は周囲が騒がしいのに気付いた。

「おい、やべえぞ。見に来いよ!」

 サッカー部員の一人が大声叫んで、誰かを呼んでいる。いや、誰でも良いからとにかくたくさんの人を呼んでいる。興味を惹かれた運動部員たちが、手招きされた方へがやがやと走っていく。

 僕も便乗して、彼らに付いて行くことにする。校舎の裏側に来ると、人だかりができていて、嫌な予感がした。

 その場所は、さっき僕があたりを付けた人気のないポイントだった。

 体育着姿の運動部員ばかりで構成された野次馬の壁をかき分けて中心部を一目見ようと背伸びする。

 そこには血に染まった地面の上に、この学校の体育着を着た、死体があった。

 死体は頭が潰れていて、誰なのか分からなかった。

 僕は怖気がして、慌ててその場から離れると、何度も何度も自分の足を叩いては、自分にちゃんと足が付いていることを確認した。