読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

私のブログ。

このブログを書いているのは誰かな? せーの、私だー!

【劇場版まどかマギカ】ラストシーンの意味とほむらの本心

 まどかマギカ劇場版を2回目見てきたんですよ。一回目見てきた時にちょっともやもやしてて見直したかったんです。

 一回目見た時は私よく分かってなくて「いやあ何ほむらちゃん悪堕ちしちゃってんの(笑)」と思ってたんです。はい。

 

一回目の自分を今すぐ殴りてえ!!!

 

 違ったんですよ。全然違う。ほむらさんの本心は。もうさん付けで呼ばせてください。おい、ほむらさんがクソレズ女と言ったか? みんな制作陣側に騙されてる!

 みなさん劇場版をご覧になって、エンディングの後の最後のシーン、意味分からなくなかったですか?

 あの、崖の上で椅子に座ってるほむらさんの元にボロ雑巾になったキュウべぇが現れ、ほむらさんは崖の下に落ちる終わり方。

 私は意味わかんなかったんですよ、一回目見た時は。エンディング後にわざわざ時間とってまでなんでこんな無意味なシーンを入れたんだろうと。けれど二回も見たら流石に分かる。あのシーンはほむらさんの真理描写をしていたんだ。

 

ほむらちゃんが悪魔になるまで

 最後のシーンの謎を解き明かす前に、ほむらちゃんが悪魔になるまでの流れをまとめましょう。

 すべてはまどかとほむらの会話からです。マミさんと銃撃戦を繰り広げ血まみれになったほむらちゃんをまどかが見つけてからの会話シーンです。

 そのシーンでのまどかのセリフは

「ひとりぼっちになっちゃ駄目だよ、ほむらちゃん」

「私がみんなを置いて一人で遠いところに行っちゃうなんてありえないよ。(中略)そんなの耐えられないよ」

 それに対しほむらは

「私はあの時どんなことをしてでもまどかを止めるべきだったんだ」

「まどかのためならどんな醜い姿になっても良い。どんな苦しみを受けることになったって良い」

 と言いました。ちょっとセリフうる覚えですけれど、こんな感じでしたね。二人のすれ違いが伺えますね。

 でもほむらはこの時あくまでまどかのために尽くすスタンスでいた訳だ。それがどうしてほむらは悪魔になってしまった? 

 いや実は悪魔になったこともまどかのためを思っての行いだったんじゃないか?

 

 円環の理に導かれようとした時にほむらはこう思ったでしょう。

「私が導かれたら誰がまどかを守る?」

 キュウべぇの今回のたくらみは魔法少女のソウルジェムを隔離することで円環の理をおびき出し、制御下に置くことでした。だったら隔離するソウルジェムは別にほむらさんのじゃなくていいですよね。

 ならばほむらさんが円環の理に導かれた後、キュウべぇたちは再び別の魔法少女のソウルジェムを隔離させて今度こそまどかを制御下に置いてしまうことでしょう。

悪魔化がもたらしたもの

 さて、ほむらが悪魔になってどうなったでしょう。

  • まどかは円環の理から切り離されて、魔法少女でもなくなり、普通の人間としての人生を歩めるようになった。
  • ほむらは悪魔の力でキュウべぇたちを制御下に置き、円環の理が危機に陥ることはなくなった。絶望の連鎖は断ち切られたままに済んだ。
  • かつて魔女になった魔法少女は生き返ることができた。

 良いことずくめじゃないですか。ほむらさん良い仕事し過ぎですよ。

 ここまで思惑通りにことが進むとほむらさんはさぞかしご満悦でしょうね。

そんな訳あるか!!

ほむらの本心とラストシーンの意味

 ここでラストシーンの意味を明かし、ほむらさんの本心を探りましょう。

 エンディングが終わった後に崖の上で一人椅子に座っているほむらさん。彼女のところへボロ雑巾状態のキュウべぇがやってきて、ほむらさんは綺麗な弧を描いて崖に落ちていくんでしたね。

 実は作中、このシーンと同じ構図の場面が一つだけあったんです。

 それはどこか?

 

 ほむらが魔女になった時の心象風景です。覚えていますか?

 前作劇場版のオープニングで草原の上にふたつ椅子を並べてまどかとほむらが頬を擦り合わせた場所で、

 まどかが椅子から傾き落ちてぐしゃっと潰れる。

 そんなシーンがほむらが魔女化した時にありました。

 その時のまどかの椅子からの落ち方が、ラストシーンでのほむらの崖からの落ち方と一緒なのです!

 このまどかの「落ちる」という動作は当然、「重い役目を引き受け、誰からも遠いところへ行ってしまう」ことの比喩でしょう。

 そしてほむらも「重い役目(=キュウべぇに睨みをきかせ、まどかが円環の理の力を取り戻さないようにし、魔法少女の絶望をためないように気をつける)を引き受け誰からも遠いところへ『落ちて』しまった」

 二人の落ち方は一緒であるが、しかし違うところもある。まどかが椅子から落ちた時はほむらが追いすがった。たった一人だけどほむらはまどかのことを覚えていたのです。

 けれどほむらのことは誰も覚えていない。みんなほむらのことを忘れてしまった。まどかすらほむらのことを忘れてしまった。

 覚えているのは感情のない生物であるキュウべぇだけ。誰もほむらが崖から落ちるのを追いすがってはくれない。

 ほむらは本当に独りになってしまった。

 とんだ憎まれ役を買ったもんだよ、ほむらさん。

 ラストシーンで椅子に座っていたほむらは、物音にハッと振り返りますが、それがキュウべぇだと知ると寂しそうにがっかりした顔をする。一人寂しく相手のいないダンスを踊る。ほむらは一体誰が来たと思ったんでしょうね。

結論

 今回の劇場版で、ほむらはさやかやマミや杏子ら魔法少女から忘れられ、愛するまどかからも忘れられてしまいました。その上視聴者からは悪に染まったと見離された評価も受けてしまう。

 つまり劇場版まどマギは劇中の登場人物からだけでなくファンすら巻き込んでほむらちゃんを孤立させるための壮大なほむらちゃんいじめ映画だったんだよ!!

な、なんだっt(ry

 でも当然視聴者の中にはこうやってほむらさんの孤独に気付いてやれる人も出てくる訳です。

 だからそこまでが制作者の狙い通りなんでしょうね。

 ファン「ほむらちゃんかわいそ過ぎる! 続編つくってハッピーエンドにしてくれ!」

制作陣「良かろう。だから続編もちゃんと身に来いよ」

 すべては制作陣の掌の上だったのだ……。

 

 以上、今回の劇場版魔法少女まどかマギカ叛逆の物語は

「ひとりになったらだめだよ。ほむらちゃん」

 な映画だったということです。

おわり。

 

追記。この考察を踏まえるほむらさんの行動はだいぶ独善的に取れますが、それは繰り返し時間逆行を行う上で人に話を聴いてもらうことへの諦めがそだったためでしょうね。

ネタバレ感想書き殴り。劇場版まどかマギカ観てきました。

 7時に起きて30分で支度をして雨にも負けず行ってきました映画館。

 上映一時間前の段階で映画館内は観客で一杯です。パンフレットを買うのに物販列に並んだんですけれど40分も並んでようやく買えました。最中暇だったんで数えてみたら上映30分前の段階で物販列に100人以上並んでいましたね。若い男女がほとんどでしたけれど、小さい女の子を連れた親子もいました。

 来場者特典の色紙はまどほむで、神引きだと思いましたよ。ええ、映画を観るまでは。

 映画前の宣伝で化物語とコラボして中の人ネタしてたのは何とも言えない感じでした。知らない人はポカーンってなったでしょう。

 さあ映画が始まります。こっからがネタバレです。

 序盤はまどかマミさやか杏子らおなじみの魔法少女が新たな敵ナイトメアと闘っている。まどかマミさやか杏子が闘っている。プラスお菓子の魔女とキュウべぇ

 いやいやお前ら神になったり円環の理に導かれたりしただろう。

 この時点でこの映画の舞台は誰かのつくった虚構世界であることが予想されて、いったい誰の世界なんだと思いました。推理小説ですね。魔女化まどかかほむら辺りかなあってこの時点で予想してました。

 で、朝になりテレビの使い回しでまどかが母親を起こして食事をとって、食パンをかじりながら登校したところでOP。

 OPよく覚えてないんですが、マミまどさや杏がやたら楽しそうに踊ってるのに対してほむらが泣いて崩れ落ちてるのが印象的でした。これは何かあるなと思ったんですよ。

 OPが終わると学校。さやかと杏子と登校されるまどか。はぶられた緑。転校してくる眼鏡みつあみほむら。なんだか今までにないくらい和気あいあいに魔法少女グループに加入するほむらさん。

 緑の人がはぶられたのは恭介と付き合ってさやかとぎくしゃくした&魔法少女のこと秘密にされてなんとなく疎遠になった、みたいなところがあるんでしょうね。

 さらに追い打ちをかけるように恭介は緑の人に冷たくする。ショックでナイトメアを産む緑。さやかちゃん「人生経験ってやつ?」。あっ。

 こっからしばらく見ていて大爆笑しました。謎のフィギュアスケート変身。プエラマギ・ホーリークインテッド!何これ魔法少女物かよお。突如始まるマジカルバナナ。そして王食晩餐。俺たちが見てたのはトリコだったのか!?早朝朝帰りなのに先輩の部屋によってお茶とケーキいただいてくのが飲み帰りのOLっぽい。

 違和感に気付くほむら。眼鏡とみつあみをほどき馬脚を現す。頼れるのはやっぱり杏子ちゃん!暗躍する時に便利な安定のアウトローキャラ。町から出れないのは?風絶!?

 マミさんの連れてるお菓子の魔女が怪しいと睨むほむらさんは時間をとめて尋問。ちょっと先走り過ぎじゃないですかほむらさん。しかし事前にマミさんによって足に巻き付けられたリボン。始まる銃撃戦。ほむらが取り出した拳銃で世界観が一篇。止まる無限の銃弾。マミさんつえー!このシーンだけで見に来たかいがあるってもんよ。互いに致命傷を与えることができないでいるほむマミ。いいっすねえ。

 マミさんに追い詰められ絶対絶命のピンチに陥るほむらを助けたのは懐かしの消火器と剣……サヤカチャン!? お菓子の魔女がロリキャラアスミスボイスに!??

 なんてことださやかちゃんはスタンド使いになってしまったのか!!

 まどかさんに見付かって、慌てて目元の血をぬぐい去るほむらさん可愛い。まどかさんまた訳が分からないよって顔してる。

 ついに真実に気付いたほむらさん。ここはほむらさん自身が作り上げた理想の世界だったのだ!! いや、主人公が犯人ってネタは使い古されてますぞ。崩壊し始める世界。魔女化するほむらさん。話が壮大になってきて感情移入ができねえ。

 キュウべぇが悪事を暴かれて針のむしろ状態になっている。ざまあと言えないのはなんで何でしょうね。

 ようやく迎えにきてくれたアルティメットまどかさん。さやかちゃんも円環の理の一部になっていた!? 「3年もかかっちゃった」ってお前らもう高校生かよお。

 ああ、ここでほむらが救済されて終わりなのかなあと思うものも、思い出すはオープニング映像。オープニングでは最後まで救済されてないほむらさん。思い出すは予告の映像。まだほむらさんがソウルジェム噛み砕くシーンをやっていない。まだなんか在るぞ?

 悪堕ちだああああああああああ!! すべては愛ゆえに!! つうかコスチュームエロいっすよほむらさん。愛が重いっすよ。

 「「「「わけがわからないよ」」」」

 このセリフはちょっとあざとすぎるというか、この映画全体的にファンサービスのやりすぎですよ。

 改変された世界でスタンド能力を保ちつつも人間としての人生を取り戻したさやかちゃんの心の中のぐちゃぐちゃ感が伝わってきていいっすねえ。

 転校してくるまどか。お前帰国子女かー。

 せっかく集まってきた友達候補をほむらに散らされてまどか可哀想だと思いました。そんな怖い人に抱きしめられて電波なこと言われてリボンをプレゼントされるまどかさんは当然ひきつった表情をしています。エンディングへ。エンディング後のぼろぼろキュウべぇは何故わざわざ入れたのか分からない感じでしたね。

 終了。

 テレビアニメ版では時間移動する度にまどかが記憶を失うのが辛いと言ってたほむらちゃんが、今回は自らまどかさんの記憶を奪ったのは成長の証と言っても良いんですかね。

 ちゃんちゃん

 

 

剣塚

「その町の丘には神代の昔から伝わる伝説の剣があるのにね、誰も抜こうとしなかったんだ。世界は魔王に征服されそうだったのにね」
「誰にも抜けないから諦めたのではないか」
「いいや。魔王に立ち向かう勇気があれば誰にも抜けたんだよ、それは。ただ立ち向かう者がいなかった」
「ああ、分かった。魔王へ立ち向かう理由がなかったんだな。つまりその、魔王は人間の王よりも善政を布いたんだ」
「おしいね。良い線行ってる。確かに人間の王は身分制度の下層に位置する民を虐げたよ。けれど魔王の政治が人間に親切だった訳ではない。人間の王の政治と比べても魔王の政治は人間に厳しかった」
「じゃあ、どうして」
「それはね、留飲が下がったからですよ。自分を虐げた王や貴族が自分と同じ下賤な地位の者として魔族に扱われるのを平民が期待したのです。ああ、人間の貴族たちが剣を抜こうとしなかったのは単純に抜けなかったからですよ」


前にラノベを書こうと思って挫折したんですよ

「おやおや。ハリボテのリーダーは大変ですね。弱いくせしてトップに立つからスケープゴートにされてしまうんですよ」

「ふふ。そうかもしれないな」

「何がおかしい! 状況を分かっているのですか。ここであなたは死ぬのですよ」

「その間に部下が逃げてくれるなら本望だよ」

「はっ。これだから矜持のないヤツは嫌いですね。逃げた部下は今頃あなたのことを馬鹿にして笑っているでしょうよ。あなたはリーダーと担がれて面倒事を背負わされたにすぎない」

「俺にも矜持はあるさ。ただ、目的を達成するためなら矜持なんて捨てられるだけ……。まあ確かにあんたの言う通りだな。このスタンスじゃ部下に威厳を示せないからいけねえ」

「ほう。だったらどうしますか。この私を、頽廃世界第四位であるミームを倒して武功を立てますか?」

「うん。そのつもり」

「……! はは……どうやら追い詰められてイカれてしまったようですね。あなたの部下が絶対勝てないと狂乱して逃げて行った様をお忘れですか」

「そりゃあ、部下が絶対勝てないってヤツを倒さなきゃ武功は上がらないだろ」

「ハハ……ハハハ……! 本当に頭がおかしいようだ! いいでしょう。気に入った。苦しまずに死なせてあげます………………は? …………!? な、何だこの……闇は!」

 ミームの目が驚愕に開かれる。

「あのさあ、ミームさんよお。そんなに多弁だと弱く見えるぞ。……困るんだよねえ、弱いヤツ倒したって部下からの尊敬集まんないからさあ」

「これは……馬鹿な……ぐ、グオオオオオオオオオオオオ!」

 ドンッ。

 はじけるような音がして、ミームの姿が消える。

「……逃げたか。懸命だな。考えなしによくしゃべるからもっと馬鹿なヤツかと思ってた。……まあ、部下への手土産は腕一本でも充分だろ」

 彼は残された右腕を地面から拾い上げた。

今朝見た夢

 部屋に機械音が鳴っていた。ブーンってドリルが回転するような音がしていて、実は機械じゃないのさ。ハチだった。それはそれは奇妙なハチが羽ばたいていた。僕がハチにおびえて部屋の入り口から逃げ出すと、たまたま同じ部屋にいた後輩は臆することもなく飛んでるハチを目で追って、言う。

「このハチ、背中に幼虫を背負ってますね。おんぶハチですよ」

 シュッとした流線型のハチはたしかに背中に白くて醜いガムみたいなものをこびり付けていた。飛んでいるからよく追えないが、あれがハチの幼虫なんだろうか。

 後輩はもう興味をなくしたようで、パソコンの画面に目を戻した。画面には私のこれまで生きてきた記憶が走馬灯のように流れていた。私は24年間生きてるのだから、彼がそれを見終わるのに24年かかるのだろう。

「ハチは、もういいのかい?」

 僕が恐る恐る言うと、後輩は画面から目をそらさずに言う。

「放っておけばそのうち死にますよ。おんぶハチは幼虫を背負ったまま飛び続けていると、幼虫にぼこぼこに殴られて死んでしまうんです」

 僕は驚き眼をみはった。おんぶハチはまだ飛び続けていた。なのに死んでしまうんだという。

なぜ幼虫はハチを叩くのだ? それを聞こうとしたところで私の目は覚めて、奇妙な夢とともにおんぶハチも後輩もいなくなってしまった。

エルマー・ヴァン・デル・ライデンからの手紙

 夕暮れの街を駆け抜けるあの電車に大槻は揺られている。大槻にとって電車は実に良いものだった。ただ乗っているだけでどこかへ運んでくれる。切符を買って乗り込んだら、後は目的地に着くまで座っていればいいのだ。身体を意識的に動かす必要はなく、植物みたいに椅子に根を張るのだった。

 やあ窓の景色を見てみれば草木が生えて、電車が通る勢いに揺さぶられている。彼らは何処にも行けないけれど、大槻は何処にでも行けるのだ。電車の許す限りではあるけれど。

 そんな調子で大槻がボーっと車窓から見える景色が流れていくのを見ていると、電車のスピードが緩まって、駅に停まった。乗客が乗り込んできて、途端に身をすくめた。黄色いバッグをかついだ中学生や、丸刈りの男子高校生、紫の髪をしたおばさんといった連中が混ざりあって電車内に乱立するのを見ると、落ち着いてられなくなったのだ。

 大槻は心を鎮めようと、膝の上に抱えたカバンの中からエルマー・ヴァン・デル・ライデン宛てに送られた封筒を取り出し、そこから何枚かの便箋を取り出した。そこには小さな丸い文字で短い物語が書かれている。

 大槻はその物語に目を落とし、これで何度目になるか分からない読書を再び始める。

 

 カミーユは朝目を覚ますと自分の左胸が磁石になっているのに気付いた。今まで兆候はあったが微弱な磁力だったので気のせいだと思っていた。だけど今朝に限っては、認めざるを得ないほど強力になっていた――そう、くっついてとれなかったのだ。彼女のパパがお節介にもくれた毎朝やかましい目覚まし時計が張りついて、心臓の鼓動と一緒に振動しているのだ。お陰ですっかり目が覚めてしまった。睡眠を何よりも大切な時間だとしていたカミーユにとって、目覚ましごときに起こされるのは屈辱的だった。

力を入れて引っ張って、ようやく目覚まし時計を取り外して時間を見ると、彼女は大学の授業が既に始まった後だと気付いた。

 カミーユは自分の身に今起きていることが、いつか読んだ小説に出てくるグレゴール・ザムザの運命に似ているぞと思った。ザムザは毒虫になってなお、仕事を寝坊したことに焦り、毒虫の姿で出勤しようとしていたのだ。そしてカミーユは磁石人間となった。ザムザを反面教師にすれば、カミーユは授業に行かずに自分の身体に起こった異変について案ずるべきなのではないかと彼女は思った。

 ベッドから半分だけ身体を這いだし、ベッドの隣にあったスチールの机から、張り付いていた磁石を一つだけとって、自らの左胸へ近づけた。すると、カミーユの左胸は磁石のS極に引力を、N極に対して反発を示した。

「南極へ行ってうつ伏せになればあたし宙に浮くかもしれないわ」地球が巨大な磁石であることを思い出して彼女は独り言を言った。

「さあて。磁力が発生しているということは、その発生源は大抵の場合、電子の運動に決まっているわ。一口に電子の運動と言っても、並進運動、熱振動、スピン運動の少なくとも三種類くらいあるかしら。果たしてどれでしょうね。

電子の並進運動はつまり電流こと。だけど私の身体の中で電流が流れているとは考えにくいのよね。こんな時テスタがあれば私の中の電流値を調べられるけれど、気の利かない私の引き出しにはボールペンとかスケッチブックしか入ってない。まあとにかく、電流は磁場発生源の候補から外しても良いでしょう。左胸だけに電流が流れていると考えるのも不自然だしね。

次に熱振動だけど、そういえば電磁気学の講義で熱振動による磁場の発生について習った覚えがないわ。いったいどうしてかしら。でも素直にフレミングの法則を使ったら、引っ張る力と追いやる力が交互に生じる磁場になるだろうことは分かるのよね」カミーユは左手をフレミングのそれの形にして、一定のリズムでひっくり返したり戻したりしていた。「でも私の愛すべき目覚まし時計は私が引っぺがすまでくっついていたわ。ということは力の向きは一定だし、熱振動説はやはり却下ね。とすると残るは本命のスピン運動だわ。磁石が磁力を生み出す根源こそスピン運動なのよ。スピン運動が磁力となるのは、全部の電子が同じ向きにスピンしなきゃいけないけれど、磁石の結晶ってそうなるような形を初めからしているのよね。つまり私の左胸も何かの拍子にそういう、スピンが同じ向きになるような形に、なっているということなのかしら。ああ、後で科学の本をひっぱりだして、磁石の結晶構造と私の左胸の結晶構造を比べてみようかな」

 その後もカミーユはベッドの上でうんうん唸っていたけれど、しばらくすると大きなあくびをして布団に再び潜って二度寝を始めた。

 もし君がカミーユに「磁石になった左胸の謎はもう良いのかい?」と聞けたなら、彼女は眠りを妨げられた時の不機嫌顔でこう言うだろう。

「睡眠を我慢してまで考える価値のない謎だって気付いちゃったの」

 

 ちょうど読み終わったところで電車は駅に停車した。新たな乗客が乗ってくる。

「この席空いてますか?」

 顔を上げると眼鏡をかけた若い女性が大槻の隣の席を指さし立っていた。黒い髪をポニーテールにして、服は白くてひらひらしたフリルのついたシャツに青いスカートを身に付けている。大槻が「空いている」と答えると女性はホッとした顔をしてそこに座った。

「ああ本当に良かった。これで空いていないと答えられたらどうしようかと思いました。今日は嫌なことがたくさんあって弱気になっていましたの。ねえお兄さん、ちょっと聞いてくれませんか」

 女性はまくしたてるように口を開く。戸惑う大槻の無言を肯定と捉えたのか、一気にしゃべり出した。

「今朝はどうしたことか目覚まし時計が鳴らなかったんです。そのせいで授業に遅刻しましてね。私、大学の法学科に通ってますの。で、遅刻した授業というのが厳しい先生の担当で、遅刻した生徒は欠席扱いにするばかりか、授業で配られる資料すら渡さないという性根の腐った野郎でございまして、私は大変困ってしまいましたの。だから私、クラスメイトに頭を下げて資料のコピーを頼みましたわ。そのコピーを頼んだ人たちというのが私とはそれほど仲のよくないグループの人たちでして、残念なことにクラスで会話をしたことのあるのがその人たちしかいらっしゃらなかったの。別に、私に友達がいない訳ではありませんよ。たまたまその授業に友達がいなかっただけですわ。

ともかく、その人たちって軽薄で図々しいの。曲がりなりにも資料をコピーしてくれた人たちを悪しざまに言うのもはしたないことではありますが、それを承知でもう一度言わせてください。その人たちったら本当に軽薄で図々しいの。私、彼ら五人分のお昼ご飯をおごらされたわ! 一人分の資料をコピーするのになんで五人分もおごらなきゃいけないの。しかもファミレスで下らない話に付き合わされたわ。三時間もよ。ドリンクバーにデザートまで頼みやがりましてぺちゃくちゃと三時間しゃべりつづけたのよあの人たちったら。いやね、私だって最初はがまんしましたよ。彼らの下種な話題にはついていけなくって、でも恩義があるから無下にもできず愛想笑いでごまかしたのだけど、それをあの軽薄な女『大八木さんってノリわるーい』ですって! ああ思い出しただけで腹が立つ。その後血液型の話になってね。やっぱり軽薄な顔した男の一人が『大八木って何型なの?』だって。呼び捨てで呼びやがったのよ。正直に『AB型です』って答えたらさ、『そこは新潟ですってボケるところだよ新潟県民ならさー』と言うのよ? 『は?』と声が漏れそうになったわよ。どうしてそんな詰まらないボケをしなきゃならないのよ。ボケてるのはそっちの頭じゃないの。その上『やっぱAB型は自分勝手で空気読めないよねえ』だってさ。もう本当『は?』よね。何。血液型占いなんて非科学的なこと信じてるの? 根拠のないエセ科学を振りかざして人のこと貶めちゃってさ。そう言うのを許されない悪って言うのよ。

まったくそもそも血液型って選択肢が最悪よね。レディに血液型を聞くくらいなら指輪のサイズでも聞きなさいよ。それがロマンチックで実に良いわ。まあ聞かれてもあんな男に教えたりはしないけどね」

 女性の話が一息ついたとこで電車は再び駅に停まった。

「僕、この駅で降りるんで」と大槻が言うと、女性は我に返ったような顔をして「ああ、私ったら長々としゃべっちゃってごめんなさい」と言って恥ずかしそうな顔をした。「でも、聞いてくれてありがとう」

 

 一期一会の女性の話を聞いて、大槻の心には未知との遭遇を果たしたような好奇心があった。人間は見知らぬ人にだってああやってペラペラとしゃべることができるのだと、初めて気付いたのだ。もし大槻が今からそこいらにいる暇そうな人物を捕まえて話をするとしたら、どんな話をするだろう。

「聞いてくれ。僕は本当に怠け者な人間で、人にあれやれこれやれと命令されなきゃ自分からは動けない駄目人間だ。幼い頃からそうだったし、この怠け癖は生来のものなのだろう。小学生の頃は宿題だって母に怒られなかったらやらなかったし、ご飯だって食えと言われなければ食べなかった。同い年の人たちが当たり前のように行使している自主性が僕には欠けていたのだ。そんな僕に友人たちは愛想を尽かして離れていった。これで両親が死んでしまったらお前は生きていけないじゃないかと両親からいつも心配されていた。

そして今、心配が現実のものになっちまったのだ。ひとりぼっちになってしまった僕はろくな食事をしなかったし、洗濯物は溜まる一方。着ているシャツも臭い。その上部屋は埃だらけだ。もうこれは死んだ方が良いなと思うのだけど、自主性がない僕には自殺することすらやる気が出ない。

 そんな僕に先日一通の封筒が届いたのだ。正確にはエルマー・ヴァン・デル・ライデン宛てにだったのだけれど。もちろん僕の家にはそんな外国人は住んでいない。しかし住所は確かに僕の家となっていた。これは不思議だなと思って封筒を開いて見ると中には短い小説と一通の手紙があった。

『突然のお手紙申し訳ありません。でたらめな住所を書いて闇雲にお手紙を出させていただきました。当然エルマーさんなる人物はいらっしゃらないのでしょうね。分かっています。そんな人物がいたら良いなあと思うのですが、それはただの願望です。それでも私は、私の小説を誰かに読んでもらいたかったのです。そしてあわよくば感想をいただきたい。

お手数ですが同封した小説を読んでもらえると嬉しいです。初めて書いたので、めちゃくちゃで、起承転結もなっていない、価値のない文章かもしれません。つまらなかったの一言でも構いません。屑小説と罵っても良いです。どんな評価も受け入れ、歓迎します。どうか正直な感想を私にください。よろしくお願いします。』

 手紙の最後には送り主の名前、県外の病院の名前と、入院病棟の部屋番号が書いてあった。

 この手紙は僕へ下った久々の命令だ。僕は何としても手紙の送り主へ感想を届けねばならないと思った。そのためにまずペンと便箋を買ったし、その病院へ行くための汽車を調べもした。人に会うために身なりを清潔にして、ひげを剃ったよ。ああ、僕がペンと便箋を買ったのはね、直接感想を言う勇気がなかったからさ。病院まで行ったら看護婦さんに託して渡してもらうよ。もちろん送り主の名前はエルマー・ヴァン・デル・ライデンさ。今から届けに行く」

 大槻は頭の中でそんなセリフを反芻していると心が躍って、病院に向かう足取りが跳ねるようになった。もちろんその辺の見知らぬ人を捕まえて上記のようなセリフを言ったりなどしない。大槻にとっては頭の中で言葉を発するだけで十分だったのだ。

 大槻は病院に着くと案内板に従って、入院病棟へ一直線に向かおうと思った。だけどちょっと思い直して一階のロビーに座った。カバンから渡す予定の封筒を取り出すと封をしてあったシールを丁寧にはがして中に入れてあった手紙を取り出し、その最後の余白にこう書き足した。

「追伸。これはちょっとした雑談ですので気楽にお答えください。あなたの指輪のサイズはいくつでしょうか?」

 大槻は満足した表情で手紙を封筒にしまい直すと、丁寧に封をし直し、入院病棟へ向かった。

 彼は気付いていなかったが、このささやかな書き加えこそ彼が初めて為した自主的な行為だったのだ。

タイトル特に思いつかんかった

「さあ、嘘を吐け。さもなくば死ぬぞ」

 もちろん死ぬはずなんてないのだ。

 

 この最初の二行を読んだ読者は、なんだよくわからなねえと思うだろうが、まったくその通りである上に今後理解できる日は来ないだろう。

 普通の小説だったらここから読者に分かりやすい説明がドラマチックな展開とともに行われるのだろうが、私はそんなの書くつもりはない。甘えんな!!

 この俺がまともなプロットを立てていると思うなよ? まったくをもって無計画じゃ。嘘を吐かなかったら死ぬとか阿呆くせえ。もちろん死ぬはずなんてないのだなんて悟っちゃったようなこと言っちゃって! いつからそんなに大人びてしまったの。

 や、無理をすればこの先の展開をつくることもできる。例えば最初のセリフを言った人物は、言霊の力を心から信じる男で、もし相手が嘘を吐かなかったら本当に死ぬと勘違いしているのだ。それで言われた側は言霊ごときに殺される軟弱な身体は持っていないし死なないと思っているのだが、相手に合わせて嘘を吐こうと試みる。なぜわざわざ狂人に付き合う真似をしようとするのかと言えば、相手が正常な精神を持っている時に莫大の恩を受けたか、コイツを利用してひと儲けをたくらんでいるか、もしくはこいつに習って自らも狂人になろうとしてるからだ。私の頭に浮かぶ選択肢はこの程度だが、どれをとっても大した話にはなりそうがない。物語じゃねえんだ。書きたいのは。

 ところで夏になるとなぜかミミズがアスファルトに這いだしてきて、そこで干からびるか轢かれるかして死んでるんだ。奴らは自殺志願者なのか? 毎年年中行事のように大量に死んでやがる。いい加減絶滅するんじゃねえのか? 日本人だって毎年三万人自殺していて絶滅しようとしているしさ。

 そうだ砂漠をアスファルトにしようぜ。あんなところに森をつくるならアスファルトもだ。舗装されていれば植林の保全に車で行けるし歩きやすくなるし、砂漠で遭難していたサンテグジュペリも星の王子様に出会わず帰還したかもしれない。納豆菌ポリマーがすげえ吸水するから砂漠に納豆菌撒こうぜみたいな話になってるんだっけ。もやしもんで言ってました。はい。漫画は人類にすべてを教えてくれます。

 漫画を、漫画を読むのです。絵柄で好き嫌いしてはいけないのです。